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箱と霧と私たちの生活 坂本湾『BOXBOXBOXBOX』を読んで

アイキャッチ 箱と霧と私たちの生活 坂本湾『BOXBOXBOXBOX』を読んで 本(読む・聴く)

我が家は4人家族なので、配達されるダンボールの数が半端ありません。
私は爪が痛むのでダンボールを畳むのが好きではありません。
でもそんなことを言っていられないほど、玄関にどんどん溜まっていきます。

数年前からマンションのゴミ置き場のダンボール置き場に、ダンボールがうず高く積み上げられるようになりました。
今の私たちの生活は、この「箱」が運んでくる便利さで成り立っていると言ってもいいかもしれませんね。

坂本湾『BOXBOXBOXBOX』

坂本湾さんの『BOXBOXBOXBOX』。

第41回文藝賞を受賞し、第174回芥川賞の候補にも選ばれた、今もっとも注目されている労働小説という評判を聞いて図書館で予約しました。
それなのにこの小説は、驚くほど短くて、あっという間に読めてしまいました。

不思議な話だった・・・

けれど、読み終えたあとのスッキリしない感覚は、なかなか消えてくれません。

舞台は、薄い霧が立ち込める宅配の配送センター。
なんで屋内に霧が出ているんだろう?
もうこの時点で頭がぼんやりしてしまいそう。

延々と流れてくる荷物を、ただ機械的に仕分けていきます。
私はヤマト運輸の羽田クロノゲートベースの見学をしたことがあるのですが、そこでは凄いスピードで回るベルトコンベアーとコンピュータのアームによって、地域別に荷物が振り分けられていました。

小説の舞台ではそれを人間が目視で行うのです。
人間としての名前や感情を剥ぎ取られ、ただ「仕分けの装置」として機能することを求められる、息苦しいほどのブラックな職場です。

主人公の安(あん)は、単調すぎる労働をやり過ごすために、箱の中身を妄想します。
気晴らしができない人はどんどん辞めていきます。

妄想が現実を侵食し、やがて開けてはいけない「箱」を覗き込んでしまったとき、物語は不穏な加速を始めていきます。

人間としての限界を突破してしまったような人たちが、霧の中で箱を運び続ける光景。

それはどこか遠い世界の寓話のようでいて、実は私たちのすぐ隣にある現実を抉り出している気がして、少し怖くなりました。
そのような体験をしたことがないけれど、こんな職場は実在しているんだろうな。

夕方の景色

さて、少し温かいものでも飲みましょうか。
ルイボスティーにしようかな。

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