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松家仁之『天使も踏むを畏れるところ』調べながら読み進めたい長編小説

松家仁之『天使も踏むを畏れるところ』調べながら読み進めたい長編小説 読書

松家仁之の小説『火山のふもとで』を読み終えたあと、深い満足感が残りました。

あまりにも良かったので、読み終えたあとに作家のことや作品について調べてみたところ、『火山のふもとで』に登場する建築家・村井俊輔を軸にした物語が、実はその前の時代を描く形でもう一作書かれていることを知りました。
それが『天使も踏むを畏れるところ』です。

同じ人物の若い頃へと遡る物語が、上下巻の長編としてすでに出版されている。
そう知ったときは、素直にうれしくて、すぐに読み始めました。

著者紹介

松家仁之は、1958年東京生まれの小説家です。
長く新潮社の編集者として働き、「新潮クレスト・ブックス」の創刊にも関わってきました。
編集者としてのキャリアを経て、50歳を過ぎてから小説を書き始め、2012年に『火山のふもとで』でデビューしています。

編集者時代には海外文学を中心に多くの作品に携わり、村上春樹のインタビュアーを務めていたことでも知られています。
そのためか、文章には過剰な装飾がなく、抑制の効いた静かな文体が特徴です。
建築や自然を背景にしながら、人が働くこと、生きることを丁寧に描く作風は、デビュー作から一貫しています。

作品紹介

『天使も踏むを畏れるところ』は、戦後の皇居「新宮殿」の造営をめぐる史実を土台にした長編小説です。

上下巻に分かれた構成で、物語の舞台は昭和30年代、空襲で焼失した明治宮殿に代わる新しい宮殿を建てるという、国家的なプロジェクトが進められていく時代です。

物語の中心にいるのは、建築家・村井俊輔。
『火山のふもとで』では円熟期の姿が描かれていましたが、本作ではその若き日の仕事が描かれます。
設計という専門的な仕事を通して、官庁、制度、慣習、立場の違う人々と関わりながら、建築に向き合っていく姿が丁寧に描かれています。

実在の場所や出来事が数多く登場し、皇居や霞が関、官庁街などが具体的な地名として語られます。
そのため、物語はフィクションでありながら、当時の社会や空気を強く感じさせるものになっています。
一方で、専門的な知識を前提にしなくても、登場人物たちの思考や葛藤を追っていくことで、自然と読み進められる構成です。

『天使も踏むを畏れるところ』は、出来事の派手さよりも、仕事の過程や判断の積み重ねに重きを置いた小説です。
だからこそ、一気に読むよりも、立ち止まりながら、調べながら読み進めることで、その輪郭が少しずつ見えてくる作品だと感じました。

調べながら読み進めたくなる理由

この作品を読んでいると、物語の流れとは別のところで、気になることが次々と出てきました。
登場する地名や建物、制度の名前が、どれも現実の延長線上にあり、知らないまま読み進めるより、少し確かめてみたくなるのです。

実際に地図を開いたり、当時の出来事を調べたりしながら読むことで、文章の中に出てくる出来事が、抽象的な歴史ではなく、具体的な時間や場所として立ち上がってきました。
調べることで理解が深まるというより、物語との距離が縮まっていく感覚に近かったと思います。

実生活でも皇居東御苑を訪れたり、宿泊していた友人の別荘がある八ヶ岳高原ロッジの音楽堂の設
計が吉村順三によるものだと知ったりと、読書の外側で起きている出来事が、思いがけず作品と重なっていきました。
それが本当に楽しいのです!

本の中で描かれている建築や場所が、遠い世界の話ではなく、実際に足を運べる場所や、自分の記憶と結びつく存在として感じられるようになっていきます。
調べること、確かめること、実際に見に行くことが、物語を理解するための作業というより、読む時間を豊かにする行為になっていました。

ページをめくりながら、現実の出来事や体験と静かに往復する。
その繰り返しのなかで、この小説は少しずつ、自分の生活の延長線上にあるものとして定着していったように思います。

読む時の注意点

正直に言うと、『天使も踏むを畏れるところ』は、気軽に読み始められる小説ではありません。
上下巻に分かれた長編で、登場人物も多く、語り手がいつの間にか切り替わっていることもあります。
読み進めている途中で、「今は誰の視点なのか」と立ち止まる場面が何度もありました。


分からない部分があっても、そのまま読み進めたり、少し戻って確認したりしながら読むことで、全体の流れは自然とつかめてきます。

私は調べながら、立ち止まりながら読んでいて思うのは、時間がかかることをネガティブに感じる必要はないということです。

本を読むのは本当に体力がいることなんですよね。
エンジンがかかるまでには少し時間が必要ですが、読み方のリズムがつかめてくると、この小説ならではの面白さが、静かに見えてくるはずです。

私の感想のまとめ


『天使も踏むを畏れるところ』は、下巻に入った今も、読みながら立ち止まり、考えさせられる場面が続いています。
一気に物語を追うというより、その都度ページを閉じて、頭の中を整理しながら進んでいる感覚です。

建築や制度、時代背景について調べながら読むことで、物語は少しずつ立体的になってきました。自分は近代の歴史についてほとんど知らなかったのだと痛感しながら、それでも知らないことを一つひとつ確かめていく時間が、この読書の大切な一部になっています。

まだ物語の途中ですが、ここまで読んできて思うのは、大勢の登場人物がそれぞれの立場で仕事を成し遂げてきたことに対する率直な驚きと尊敬の気持ちです。
誰か一人の強い意思だけで物事が動いていくのではなく、意見の違いや制約を抱えながらも、それぞれが自分の役割を引き受け、最後まで投げ出さずに向き合っていく。
その姿が静かに、しかし確かな重みをもって伝わってきます。

派手な成功談として描かれるわけではありません。
それでも、目の前の仕事に真摯に向き合い、判断を重ね、形にしていく過程そのものが、読みながら「すごいな」と素直に感じさせる力を持っていました。
こうした仕事のあり方が積み重なって、今につながる風景が生まれているのだと思うと、自然と頭が下がるような気持ちになります。

下巻を読み進めるこれから先で、物語がどのような結末を迎えるのかはまだ分かりません。
ただ、この仕事を成し遂げていく人たちの姿を追いながら、引き続き時間をかけて、この物語と向き合っていきたいと思っています。

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