2025年にAudibleで耳読書した作品の中で、特に印象に残った作品を紹介していきます。
まずは、塩田武士さんの『存在のすべてを』です。
物語としての引力が強く、事件の謎を追うサスペンスのような構造でありながら、読み進めるほどに、登場人物たちが生きてきた時間の重みが静かに積み重なっていきます。
読み終えたあと、しばらく動けませんでした。
この作品は事件の謎解きも含んでいるので、きっと最後まで興味を持って読了できると思います。
著者紹介
塩田武士は、1979年生まれの小説家です。
元・神戸新聞社の記者という経歴を持ち、社会で起きている出来事や、報道の現場に身を置いてきた経験をもとにした作品で知られています。
2010年に『盤上のアルファ』で小説現代長編新人賞を受賞してデビューし、以降、現代社会を題材にした骨太な作品を発表し続けています。
記者としての取材経験を背景に、事件や社会問題を扱いながらも、描かれているのは常に「人がどのように生きてきたか」という点です。
事実や出来事そのものよりも、それに関わった人々が背負ってきた時間や、選択の積み重ねが丁寧に描かれるのが特徴です。
作品紹介
『存在のすべてを』は、平成初期に起きた二児同時誘拐事件と、その三十年後の現在を行き来しながら描かれる社会派ミステリーです。
事件そのものの真相を追う構造を持ちながら、物語の中心にあるのは、関係者たちがそれぞれの人生をどう生きてきたのか、という点にあります。
新聞記者として事件を追った過去を持つ主人公が、ある出来事をきっかけに再び取材を始めることで、長い時間の中で語られなかった事実や、人生の空白が少しずつ浮かび上がっていきます。
物語は、謎解きの緊張感を保ちながらも、次第に人の記憶や選択、その積み重ねに焦点を移していきます。
事件を扱った作品ではありますが、刺激的な展開を楽しむための物語ではありません。
読み進めるほどに、登場人物たちが背負ってきた時間や、その重みが静かに伝わってくる作品です。
実際社会で見かける、どうしようもない人間が起こしてしまう酷いことに対して、私たちはどう対処したらいいのだろう?と何度となく考えてしまいました。
なお本作は、2024年に第9回渡辺淳一文学賞を受賞しています。
また、2024年本屋大賞では第3位に選ばれており、書店員や読者からも高い支持を集めた作品です。
私の感想 まとめ
なお、本作『存在のすべてを』は、映画化が発表されています。
東映配給により映像化される予定で、原作の重厚な物語がどのように描かれるのか、今後の情報にも注目したい作品です。
すでに原作を読んだからこそ、映画ではどの場面がどう表現されるのか、静かに楽しみに待ちたいと思います。
この作品は分量もあり、テーマも重たいのですが、とにかく展開が気になって一気読み(聴き)してしまいました。
事件の真相に近づく過程が丁寧に積み重ねられていて、途中で止めることができませんでした。
読み進めるにつれて、物語が突きつけてくる現実の重さも増していきます。
誠実に生きてきた親のもとに生まれても、良い人間とどうしようもない人間が育ってしまうことも実際にはあるのです。
兄弟なのに、親子なのに、どうしてこうも違った人間が生まれてくるのか・・・
環境や愛情だけでは説明できない「人のあり方」があるのだという事実に、強い衝撃を受けました。
それは決して他人事ではなく、現実の社会でも起こりうることとして迫ってきます。
だから他人事ではいられない感情を抱いた状態で、物語を先へ先へと聴き進めていくことになりました。
それでもこの作品は家族の美しさを描いていると感じました。
こんなにも美しい愛に満ちた人間が、確かに存在していると思わせてくれる物語でした。
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