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耳読書で印象に残った一冊|吉本ばなな『下町サイキック』

耳読書で印象に残った一冊 下町サイキック 読書

2025年にAudibleで耳読書した作品の中で、心の状態を静かに整えてくれた一冊があります。
吉本ばななの『下町サイキック』です。

私は若い頃から、心が弱っているときに吉本ばななの作品を手に取ってきました。
物語を読むというよりも、言葉に触れることで、少しずつ呼吸を取り戻すような感覚に近いかもしれません。

タイトルにある「サイキック」という言葉に構える必要はありません。
この作品が描いているのは、特別な能力の話というよりも、人が無理をせずに生きていくための姿勢や距離感です。

著者紹介 吉本ばなな

吉本ばななは、1964年生まれの小説家です。
1987年に『キッチン』でデビューして以来、多くの読者に長く読み続けられてきました。

日常の中にある喪失や孤独、生と死といった重たいテーマを扱いながらも、文章はどこか軽やかで、読み手に寄り添う距離感があります。
強く励ますわけでも、答えを押しつけるわけでもなく、「そう感じてもいい」と静かに肯定してくれる作風が特徴です。

人生の節目や、心が揺らぐ時期に読み返したくなる作家だと感じています。

作品紹介

『下町サイキック』は、下町を舞台に、サイキック能力を持つ中学生の少女・キヨカの日常を描いた短編集です。

人のオーラや霊が見えるという設定はありますが、物語は派手な展開や不思議な事件を中心に進むわけではありません。
両親の離婚、近所の大人たちとの関わり、日々の暮らしの中で起きる小さな出来事が、淡々と描かれていきます。

下町という場所が持つ、少し雑多で、でも人を排除しない空気感が、キヨカの存在を自然に受け止めているのも印象的でした。

感想

『下町サイキック』を聴いていて強く感じたのは、日常の自分の在り方のモデルがここにあるな〜ということでした。
サイキックあるなしは関係なく、結局自分が感じることに最大限注意して色々決めてもいいということです。

そこに無理に何かをするということはありません。
この物語の主人公の少女きよかは、自分に見えてしまうものや感じてしまうことを、必要以上に意味づけたり、正そうとしたりしません。
起きた出来事をそのまま受け止め、どう関わるかも、自分の感覚に委ねています。

結局、この少女はとても大人なのだと思います。
自分の生きる道を理解しているのです。
経験上、これって歳をとってもできない人が多いですよね。
もちろん私も含めてです。

どんな時も、自分そのものでいることに気づきたいし、その姿勢に慣れたいと思っています。

まとめ

『下町サイキック』は、何かを学ばせようとしたり、答えを与えたりする物語ではありません。
ただ、登場人物の在り方を通して、「こういう生き方もある」と静かに示してくれる作品です。
しかもスイスイ聞き進めていけるので、軽く読書したい方におすすめです。

サイキックという設定がありながら、描かれているのは特別な能力そのものではなく、自分が感じていることを大切にしながら、無理のない選択を重ねていく姿でした。

忙しい日々の中で、自分の感覚が後回しになっているときや、どう振る舞えばいいのか分からなくなったときに、この物語はそっと立ち止まるきっかけを与えてくれるように感じます。

強く前向きにならなくてもいい。
無理に答えを出さなくてもいい。
そんな気持ちで読書をしたいときに、自然と手が伸びる一冊です。

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