本ページはプロモーションが含まれています

道なき道を行く快感と生活の崖っぷち 芥川賞『バリ山行』に震えた訳

アイキャッチ バリ山行 震えた理由 本(読む・聴く)

4月になりましたが、まだまだ寒い日が続いていますね。
せっかくの桜が雨に打たれているのを見ると、心がヒヤッとします。

そんな中、Audibleで聴き終えた松永K三蔵さんの芥川賞受賞作『バリ山行』。
読み終えたあと、心地よい疲れとともに、胸の奥がざわつくような奇妙な感覚に包まれました。

自分の仕事、そして家族の生活。
当たり前だと思っていた足元が、実はいつ崩れてもおかしくない「崖っぷち」なのではないか……。
そんな、言葉にできない不安が静かにこみ上げてくるような、不思議な一冊を詳しく紹介します。

第171回芥川賞受賞作『バリ山行』と著者・松永K三蔵さん

本作は、松永K三蔵さんによる第171回芥川賞受賞作です。
著者の松永さんは、現在も建築関係の仕事に従事しながら執筆活動を続けておられるとのことで、その経歴が作中の描写に圧倒的なリアリティを与えています。

山に魅せられた人々と、日々の生活を営む人々の交錯。
それらが現役の技術者でもある松永さんの視点を通して描かれることで、物語は単なる登山小説を超えた、重厚な人間ドラマとなっています。

「バリ山行」という禁断のルート

タイトルの「バリ」とは、登山用語で「バリエーションルート」を指します。
一般の登山者が歩く、整備された階段や道標がある安全な登山道ではありません。
地図にすら載っていない道なき道、時には崖をよじ登り、深い藪を漕いで進む、極めて難易度の高いルートのことです。

職場で孤立し、周囲から変人扱いされているベテラン社員の妻鹿(めが)さん。
彼はなぜ、週末になると独りで命懸けの「バリ」に挑み続けるのか。

主人公の波多がその背中を追うようにして、一歩、また一歩と境界線を越えて踏み込んだとき、私たちの日常の裏側に潜む「本当の姿」が見え始めます。

会社という「山」で直面する、現実の崖っぷち

物語の背景には、私たちが目を背けたくなるような「現実の重み」が横たわっています。
主人公の波多が勤めるのは、古い建物の修繕を専門とする小さな会社。
かつては活気があったはずの職場も、今や業績悪化の波に洗われ、いつリストラが始まってもおかしくない不穏な空気に包まれています。

波多自身、かつて勤めていた会社が倒産し、今の職場に流れ着いたという過去を持っています。 「次に失敗したら、もう後がない」 そんな切実な思いを抱えながら、周囲と波風を立てないよう、器用に、そして臆病に立ち回る毎日。

そんな彼にとって、職場で孤立しながらも泰然と構える妻鹿(めが)さんは、異質で、どこか危うい存在でした。

「死なずに帰ってきた」実感が 逃げ場のない現実を生きる底力となる

物語が進むにつれ、会社での波多の立場はさらに厳しいものになっていきます。
リストラの足音が近づき、誰もが自分の身を守ることに必死な空気。
そんな中で、職務を淡々と、しかし凄まじい執念で遂行する妻鹿さんの姿は、波多の目には異様に映ります。

波多には、こんなに会社が大変な時に、週1回バリを一人で行う妻鹿の心境が理解できません。
けれど、妻鹿にとっての「バリ」は、単なる現実逃避ではありませんでした。

道なき道、一歩間違えれば滑落死する崖っぷち。
そこで死と真っ向から向き合い、自分の力だけで「死なずに帰ってきた」という強烈な生の実感。その極限の経験があるからこそ、彼は倒産やリストラといった現実の荒波を前にしても、決して動じない「肝の座った」強さを手に入れていたのです。

死の淵を見てきた人間からすれば、会社という山で起きる困難さえも、受けて立つべき一場面に過ぎないのかもしれません。
趣味の山で命を懸けることで、逆に現実を生き抜くための計り知れないエネルギーを得る。
その常人離れした精神の在り方に触れたとき、おそらく波多が感じたことと同じことを私も想像しました。

そういうことはあるかもしれない。

到底真似できない けれど鮮烈に伝わる「異世界」の熱量

私は普段、Audibleを聴きながら散歩をするか、どこかに出かけて花を眺めたり、観光をするときに歩く程度です。

少し歩けば心地よく疲れてしまうし、普通の山登りだって苦しいと感じます。
そんな私にとって、一歩間違えれば命を落とすような「バリ」の世界は、到底足を踏み入れることのできない遠い世界の話。
自分には絶対にできないことだと思います。

けれど、この物語に触れていると、なぜそこまでして危ない橋を渡り、道なき道にのめり込んでしまう人がいるのか、その感覚が驚くほどリアルに伝わってくるのです。

切り立った岩肌の冷たさ、草木を分ける音、そして死の影がすぐそばを通り過ぎる瞬間の張り詰めた空気。
Audibleから流れる言葉のひとつひとつが、まるで目の前で映画を見ているかのように、私の想像力を激しく揺さぶります。

自分には絶対に無理。
けれど、そんな極限の場所でしか見ることのできない景色があり、そこへ向かわずにはいられない人がいる。

そんな「理解はできないけれど、確かにそこにある熱狂」を、この本は鮮やかに疑似体験させてくれました。

まとめ

『バリ山行』を聴き終えて感じたのは、人にはそれぞれ、自分には計り知れないような趣味や好きな世界があるんだな、ということでした。

私には到底真似できないけれど、死と隣り合わせの場所でしか得られない感覚があり、それがその人の生きる力になっている。
人それぞれ、全く違う価値観を持って生きているのだと改めて実感しました。

それと同時に、自分が送っている普通の生活も、実はふとした拍子に壊れてしまう脆いものなのだと改めて感じました。

最後に、今回私が体験したAudibleについても触れておきます。
ナレーターの声を通して伝わってくる山の風の音や、緊迫した呼吸。
耳から入り込む情報は、文字で読む以上に私の想像力を広げ、まるで自分もその場に立ち尽くしているかのような臨場感を与えてくれました。

家事をしながら、あるいは散歩をしながら、物語の世界にどっぷりと浸かれるこの体験は、忙しい毎日の中での贅沢なひとときです。

Audibleキャンペーン情報

なんと今なら、最高にお得なキャンペーンが開催中です!

3か月間 月額99円キャンペーン開催中
今ならプレミアムプランが3か月間 月額99円で楽しめます

  • 期間:2026年5月12日(火)まで
  • 内容:プレミアムプラン3か月間 月額99円
  • 備考:会員登録後4か月目からは月額 1,500 円で自動更新します。いつでも退会できます。

まだ試したことがない方は、この絶好の機会にぜひ、耳で聴く読書の楽しさを体験してみてください。
物語の中の「バリ」の空気感を、ぜひ皆さんの耳でも味わってほしいです。

>>オーディブルのキャンペーンを見る

コメント

タイトルとURLをコピーしました